一所懸命な味「たじまのお塩」

料理をするひとなら、毎日使うといっても過言ではない“お塩”。その歴史をちょっと覗いてみると、原始・古代時代から使われていたよう。

味の決め手になることはもちろん、甘みを増したり、素材を柔らかくしたり、余計な水分を逃したり。さらには、お風呂やマッサージ、歯磨きなど体のケアにも使われたり。生活に欠かせない調味料だからこそ、こだわるひとが多いのにも納得できる。

 

さて、そんな“お塩”に出会いがあった。兵庫県の北部に位置する但馬(たじま)地方のいいものを紹介する「チコニア商店」の「たじまのお塩」だ。

日本海に面した人口5000人ほどの竹野町という町で、ひとりのおじいさんが地元の海水をつかい、浜辺に流れつく流木などで炊き上げてつくっている。

塩づくりは、海水を汲み上げる、煮詰める、できた塩をすくい上げる、乾燥させる。これのひたすら繰り返しだ。複雑な工程があるわけではない。こんなふうに書くと簡単なように感じるかもしれないけれど、だからこそ、少しの違いも味に影響するという。

たとえば、煮詰める工程。「たじまのお塩」は安定した火力を保てるガスや電気は使わず、日本海の浜辺に流れ着く流木を燃やす。流木は言ってしまえば、海のゴミだ。集めるのにも処分するのにも費用がかかる。これを有効活用したのだ(現在ではお塩の生産量が増え、流木だけでは到底追いつかなくなってしまい、端材などの廃材も使っているそう)。

木を燃やして煮詰めるという作業は、不安定だ。つねに目が離せない。だから、いつも同じ味にするには、経験と勘による調整が必要不可欠。ごまかしがきかず、手が抜けない。誰がやっても同じにはなりにくい作業−−それを、ひとりで、ほぼ独学で追求したというのだから、驚いてしまう。

 

ちょっと言葉はきついが、「馬鹿」がつくほど真面目につくられたものは、文句なしに美味しい。好みとか、お腹のすき具合とか、そんなもの凌駕してしまう。一所懸命には魂が宿る。「たじまのお塩」も、魂あるもののひとつだと思う。

 

photo=冨樫実和

yuka by
兵庫県出身、浅草在住。ライフワークはランとヨガ。「機嫌よく生きる」ことに結びつくものごとを、日々探している。http://niimiyuka.com/