浅草『梅むら』の豆かんてん -豆かんてんとの馴れ初め

和菓子に目がない私は、
喫茶店やカフェへ行くのと同じ感覚で甘味処へ行きます。
私の母が和菓子好きなこともあって、
物心ついた頃から甘味処は身近な場所なのです。

ところが今回“好きなもの”として語る豆かんてんは、
多くの甘味処で目にするのに
食する機会がないまま大人になりました。

私の人生に、いつ豆かんてんが介入してきたかといえば
24歳の春。
当時は恋人だった
浅草出身の夫との初デートがきっかけ。
彼が「ここの豆かんてん、絶対気にいるから」と、
浅草にある甘味処『梅むら』へ連れて行ってくれたのです。

近くのそば屋できのこそばを平げた直後で、
豆たっぷりの一杯が出てきたとき
全部食べられるかな、と思ったのを覚えています。
でもそんな心配は無用でした。

初デートで彼より速く完食した私。
「おいしそうに食べる子」と、夫は思ったといいます。
そして、それが付き合う決め手になった、とも。
大げさかもしれないけれど、
『梅むら』の豆かんてんがなかったら
私たちは夫婦になっていなかったかもしれません。

実はこのときまで、たいへん失礼ながら
豆かんてんのことを、
「地味な食べ物だなあ」と思っていました。
かき氷のように季節感があるわけでなく、
あんみつのように華があるわけでもない。
豆と寒天とみつという組み合わせは
「きっとおいしいのだろうな」と想像はつきましたが、
どうも注文に至らなかったのです。

『梅むら』の一杯で、
すっかり豆かんてんに魅了された私。
以来、過去の分まで取り戻すかのように
いろんなお店の豆かんてんを食べ始めました。

実は、好きになりたての頃、
「どこの味も大きくは違わないだろう」と思っていました。
だって、豆と寒天とみつでできているのだもの。

でも、食べれば食べるほど、
お店によって味も雰囲気もさまざま。
どれもおいしかったけれど、
『梅むら』の豆かんてんを食べると
「そうそう、これこれ」と安らぐことに、
やがて気がつきました。

ちなみに『梅むら』は、かき氷もあんみつもおいしい。
おしるこもところてんもおいしい。
が、食べ終わったあとに
「ああ、食べてしまった・・・・」と切なくなって、
ふとした瞬間に「食べたいな」と思い浮かべるのは、
やっぱり豆かんてんなのです。

 

 

 

よもやま 「お土産のこと」

『梅むら』の豆かんてんは持ち帰りができ、
このことをお店の人は「お土産」と呼びます。

私はお店で食べるのも好きですが、
お土産にするのも好き。

まず、袋がかわいい。
白いビニールに濃いピンクの文字。
「高級甘味」と書かれているのは、
かつて花柳界のお土産として重宝された背景から。

ビニール袋の中は、さらに紙袋で包まれています。
おかげで中身がずれたり揺れたりしづらく、
差し入れなどにしても様になります。

紙袋をあけるとスプーンが行儀よく並べられ、
ちょっとしたことなんですが
丁寧な仕事を感じます。

プラスチックの蓋をあけると、ぎっしりの豆。

その下に、寒天がみっしり。

豆をこぼさぬよう、うつし・・・・
(あっ! 右端にひと粒こぼれている)

黒みつをかけます。
行儀はよくないですが
ブシュッ、ブシュッと容器が鳴くまで、
最後の一滴まで逃さない! という気持ちで注ぎます。

混ぜれば、いつもの味。
ああ、やっぱりおいしい。

 

※この記事は「ほぼ日の塾 実践編」で作成したコンテンツの転載です

yuka by
兵庫県出身、浅草在住。ライフワークはランとヨガ。「機嫌よく生きる」ことに結びつくものごとを、日々探している。http://niimiyuka.com/